コンゴ民主共和国、史上2番目のエボラ大流行について、いま知っておきたいこと

コンゴ民主共和国(DRC)で、エボラウイルス病(エボラ出血熱)の流行による緊迫した状況が続いている。

世界保健機関(WHO)はスイス・ジュネーブ時間の6月14日午後、現時点での感染拡大は「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」には該当しないと判断したが、12日時点で死者は1,400人を超えている。

今回のエボラの大流行は、2014年〜16年に西アフリカで発生した大流行に次いで、過去2番目の規模に達している。

しかも、感染が拡大している地域が紛争地で、医療チームが武装勢力から繰り返し攻撃を受け、4人が死亡している。このため、感染の封じ込めを目指す取り組みが困難を極めている。

イギリスのガーディアンは5月15日付で、コンゴ民主共和国のエボラが「制御できない」とする、専門家のコメントを報じている。

エボラウイルス病について、いま知っておくべきことを整理する。

大流行の経過

コンゴ民主共和国の保健省が2018年8月1日、北キブ州で、エボラウイルス病の発生を宣言。以後、感染拡大が収束しない状況が続く。

6月に入って、コンゴ民主共和国側から、国境を越えてウガンダに入った家族のうち、5歳児を含む2人の死亡が確認された。

WHOは、周辺国への感染拡大のリスクは、現時点では低いと判断している。ウガンダでの感染者の確認については「想定外ではない」としている。

コンゴ民主共和国での死亡者数
(2019年6月12日現在)
エボラによる死亡と確認:1,317人
疑い例:94人
合計:1,411人

WHO


コンゴ民主共和国での感染者数
(2019年6月12日現在)
感染が確認された事例:2,014例
疑い例:94例
合計:2,108例

WHO

今回感染拡大による致死率は、確認された事例だけで見ても6割を超えている。WHOによれば、昨年8月以降、コンゴ民主共和国で11万1,000人がワクチンの接種を受けたが、新たな感染者の確認が続いている。

武装勢力の攻撃で、医療チームが近づけないコミュニティが存在し、ワクチンの接種を含む医療の提供にギャップが生じているためだという。

今回エボラが発生した北キブ州は、コンゴ民主共和国の東部にあり、ウガンダやルワンダと国境を接している。

医療チームへの攻撃で、4人が死亡、38人が負傷

WHOが5月3日に現地で開いた記者会見の記録によれば、1月1日から5月3日までに、医療チームが130回の攻撃を受け、4人が死亡、38人が負傷した。

4月19日には、北キブ州内の大学病院が襲撃され、医師が死亡している。コンゴ民主共和国東部で活動する、「マイマイ」と呼ばれる民兵組織による攻撃とみられている。

5月16日付のワシントンポストは、エボラ対応にあたっている医療従事者たちが、白衣や手術衣を着るのを避け、極秘で行動せざるを得ない状況になっていると報じた。

上記は、世界の紛争や、市民への攻撃、テロなどをマッピングしてウェブで公開している”Armed Conflict Location and Event Data”(ACLED)から、コンゴ民主共和国の国境地帯の地図をキャプチャした。

エボラの発生が宣言された2018年8月から、直近の2019年5月19日までの間に、コンゴ民主共和国で起きた戦闘行為や、一般の人たちに暴力が向けられた事案を抽出すると、北キブ州など国境地帯で頻発していることがわかる。

感染経路

国立感染症研究所(日本)によれば、エボラに感染したチンパンジー、ゴリラ、サルなどの野生動物の体液と接触したことで、ヒトに感染したケースが報告されているという。

ヒトからヒトへの感染は、感染者の体液や排泄物、感染者が触れた物品などに触れることで、感染が起きる可能性がある。とくに、傷のある皮膚が感染者に体液が触れた場合、感染のリスクがある。

頻発する医療従事者への攻撃で、週ごとに確認される感染者の数は落ち着きを見せ始めているが、ウガンダでのさらなる感染拡大のおそれを含め、なお緊迫した状況が続く。

Photo: World Bank / Vincent Tremeau taken on January 7, 2019, in Beni, North Kivu region, Democratic Republic of Congo. Kasomo Kavira, caregiver at the Ebola Treatment Center, feed a child, whom mother is suspected of being infected by Ebola. Photo:

写真は、世界銀行提供。医療従事者が、子どもに食事を食べさせている。子どもの母親は、エボラの感染が疑われるという。