太るアフリカ。ブルキナ1500%、エチオピア、ガーナ500%増

さて問題です。

アフリカと日本、肥満が多いのはどちらでしょう?

2016年の世界の肥満率, WHO https://www.who.int/gho/ncd/risk_factors/overweight_obesity/obesity_adults/en/

これは、世界保健機関(WHO)が公表した世界の肥満率を示す地図だ。色が濃い国・地域ほど肥満率が高い。

日本よりも、アフリカの方が肥満率が高い。

アフリカに飢餓や貧困イメージを持つ人は、アフリカが肥満に関係しているとは思いもしないだろう。しかしアフリカでの肥満は増えている。

世界的な肥満傾向

日本では実感しにくいものがあるが、世界的に肥満は増加している。

2016年時点で世界の39%、3人に1人以上が肥満であり、1975年から3倍近くに増えた。

かつて先進国の問題であった肥満は、現在では低・中所得国にも広がっている。

日本の肥満状況はというと、ワールドファクトブックの肥満率ランキングで192ヶ国中で186位、肥満率4.3%の低肥満国だ(それでも1975年の日本の肥満率は1%であり、日本も3倍超になっているとも言える)。

アフリカの肥満

世界的な傾向とはいえ、アフリカでは肥満が進む傾向が一段と顕著にあらわれている。

2018年1月27日付ニューヨークタイムズの記事によると、この36年間でブルキナファソの肥満率は1400%増加。ガーナ、トーゴ、エチオピア、ベナンでは500%増えた。

肥満率が急増している国トップ20に、アフリカは8か国がランクインしている。

ワールドファクトブックの肥満率データではリビア、エジプトが肥満率32%、南アフリカ28%とある。

北アフリカに肥満率の高い国が多く、サブサハラでもボツワナが18%、ナミビア17%。

アフリカで一番低いエチオピアでも4.5%と日本よりも高い。

WHO(世界保健機関)によればサブサハラ地域においては女性は男性よりも肥満率が高く、妊娠出産といった女性の健康問題に大きな影響を及ぼしている。

どうして肥満に?

WHOは、次のような肥満の原因を挙げている。

  • 食べ物の好み
  • 運動不足
  • 遺伝的なもの
  • 文化的背景

高脂肪で砂糖や塩たっぷりの食事や加工食品の消費が増えた一方で、野菜や果物、ナッツ、マメ類の消費が減っている。こうした傾向が、太った人が増えている要因と関係がある。

往々にして肥満につながりやすい食べ物は安価で入手しやすい傾向がある。

ニューヨークタイムズの2018年1月の記事は、多くのアフリカ人が輸入物のジャンクフードを好むと報じている。

都市化が進んだ影響で、体を動かす機会が減っていることも関係がある。

経済成長により、多くのアフリカ人が農村での畑仕事を捨て、都市に集まっている。

道路の整備と車やバイクの普及で、これまでのように長時間歩いて移動することも減った。

多くの国では、太っていることは富の象徴でもある。

90年代のHIV流行の影響もあり、痩せていることは貧しさや病気といったネガティブなイメージにつながる。

また、幼少期に充分な栄養を取れなかった場合は後に肥満になりやすい。

貧しかった幼少期の記憶とリンクする、伝統的で健康的な昔ながらの食生活を嫌がる傾向もあるという。

実際筆者も、西アフリカ出身者らから「既婚女性が痩せていると不幸な結婚生活だと見なされるので、痩せているのは良くない」という話を何度か聞いた。

肥満は問題?

WHOによると、太りすぎや肥満は健康への悪影響があり、糖尿病や高血圧、心臓発作、ある種のガンの要因となる。

低・中所得国では、感染症や低栄養・飢餓といった従来からの健康問題と、肥満を要因とした新たな健康問題という、相反して見える2つの問題を抱える。

同じ国で低栄養問題と肥満問題が併存していることもある。

そしてアフリカの医療では、感染症や低栄養への対策が主で肥満対策にまでは手が回っていないことが多いという。

南アフリカの砂糖税の功罪

南アフリカでは2018年に砂糖税が導入された。

アフリカで初めての砂糖税の導入である。

砂糖入り清涼飲料へ課税することで砂糖の消費を減らし、高い肥満率を下げようという狙いの政策だ。

結果、砂糖入り清涼飲料の価格は10%上昇して消費量は12%低下したが、まだ人々の行動様式を変えるまでには至っていない。

クオーツアフリカの2019年3月の記事によると砂糖税は砂糖業界の雇用を直撃し、1万人規模の失業者が生まれるだろうと砂糖業界関係者は語っている。

南アフリカのコカ・コーラ社は1000人もの従業員を解雇せざる得ないという。

ただでさえ高い南アフリカの失業率を押し上げることになる。

一度確立してしまった社会の仕組みを変えることや、人々の意識を変えることは簡単ではない。

しかし、肥満問題はこれからアフリカ諸国が取り組むべき新たな課題となっている。

WHOによる肥満の定義:「体重Kg/(身長m)×(身長m)」という身長・体重から算出するBMIの指標で定義している。BMI25以上が太りぎみ、BMI30以上が肥満。

WHO

プロフィール:Risa Shimowada
東京タワーの麓でアフリカとメンタルヘルスと色々のごちゃ混ぜカフェBlue Baobab Africa ブルー バオバブ アフリカをやっています。アフリカや本、語学に興味があります。

参考にした情報

The World Factbook OBESITY – ADULT PREVALENCE RATE, Central Intelligence Agency, 2016-2014年のデータ
https://www.cia.gov/library/publications/the-world-factbook/rankorder/2228rank.html

”Obesity Overview”, WHO Africa
https://www.afro.who.int/health-topics/obesity

“10 facts on obesity”, WHO, 2017, Oct
https://www.who.int/features/factfiles/obesity/en/

”South Africa’s sugar tax is pitting job losses against national health”, Quartz Africa, 2019, Mar 15
https://qz.com/africa/1573448/sugar-tax-pits-jobs-versus-health-diabetes-in-south-africa/

”In Kenya, and Across Africa, an Unexpected Epidemic: Obesity”, The New York Times, 2018, Jun 27

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