アフリカでも失われる熱帯雨林 ――森は、燃えているのではなく、燃やしている?

ブラジルのアマゾン森林火災が国際問題化したことで、熱帯雨林の現状と地球環境への影響に注目が集まった。アフリカの森林の状況はどうなっているのだろうか。

フランス24によると、2019年8月のG7サミットではアマゾン森林火災へ2000万ドル(約20億円)の支出が約束されたが、フランスのマクロン大統領は中部アフリカの森林火災にも言及した。

2019年8月下旬のNASAの火災マップ
https://firms.modaps.eosdis.nasa.gov/map/#z:2;c:28.5,1.1;t:adv-points;d:2019-08-25..2019-08-30;l:firms_viirs,firms_modis_a,firms_modis_t

「燃えている」のではなく、「燃やしている」?

NASA(アメリカ航空宇宙局)の衛星情報による火災マップでは、アマゾンも燃えているが中部アフリカも激しく燃えているように見える。

中部アフリカに広がるコンゴ盆地は、南米のアマゾンに次ぐ規模の熱帯雨林であり、2つ目の地球の肺とされる重要エリアである。

アマゾン火災が話題になっている間に、多様な動植物の生息地でもあるコンゴ盆地も燃えていたのだろうか?

しかしフランス24の報道では、燃えているのは熱帯雨林ではないとの複数の専門家の話を伝える。乾季の終わりに、雨季に備えて火を放つ焼き畑農業の炎とみられ、アフリカでは普通の光景だという。

火災マップ上で赤く燃えるアンゴラの政府も「アマゾンと単純に比較するのは、危険な誤解につながる」と注意喚起している。

森林は燃料でもある

ではアフリカの森林にはなにも課題はないのだろうか? 森林が失われる原因は火災だけではない。

サブサハラ・アフリカの村では、樹木は燃料でもある。伐採した樹木で木炭をつくって、料理をするときの燃料にする。気温の下がる冬には、暖房の代わりにもなる。

村から町へ木炭を運べば、限られた現金収入の元にもなる。

しかし、村人たちが次々に近くの森を伐採すれば、すぐに森林は草原になってしまう。実際に、草原になってしまった地域からは村がなくなり、また別の森林のそばに村落が形成されることもある。

こうして、森林が失われる悪循環が生じている。

許可のない伐採を控えるよう村人の啓発を試みるプロジェクトもあるが、村人たちにとってみれば、樹木は生活に欠かせない燃料だ。

電気の届いていない地域で、木炭に代わりうる燃料として、プロパンガスなどが頭に浮かぶが、ガスは村人たちには手の届かないほど価格が高い。

伐採で森林が失われていく悪循環は、解決の難しい問題なのだ。

植林で解決目指す

植林で解決を目指す取り組みもある。

干ばつの多いエチオピアでは、森林伐採と気候変動対策のためにアビー首相が植林プロジェクトを立ち上げている。

BBCの報道によると、40億本の木を植える計画であり、先日の植林イベントでは1日で3.5億本を植える世界記録をつくり話題となった。

公務員らは通常業務を休止して植林活動に駆り出され、国民へは「木を植え、育てるように」というメッセージが伝えられている。

20世紀初頭にエチオピアの国土の35%を占めていた森林は、2000年代には4%にまで減少したという。

ケニアのキャピタルニュースによれば、ケニア通信会社大手のサファリコムは今後5年で500万本の木を植えると発表したという。2022年までにケニアの森林を10%にする計画だ。

サファリコムはM-pesaというモバイル送金サービスで、ケニアを中心に2260万人のユーザを抱える企業だ。影響力のある一般企業がこのような取り組みをしている。

科学系ニュースを伝えるPhys.orgによると、マダガスカルは珍しい動植物の生息地でもあるが、過去60年間で森林の45%を失った。

マダガスカルの大統領は「毎年400万本から800万本の植林が目標だ。マダガスカル国民は少なくとも年5本の木を植えてもらいたい」と語る。国民を巻き込んだプロジェクトだ。

相次ぐ森林への支援

2019年9月4日付のアフリカ・ニュースによると、コンゴ共和国は熱帯雨林の保護のため、EUから6500万ドル(65億円)の支援を受ける。

Phys.orgによると、2019年3月にケニアで開かれた「一つの地球サミット」では複数のアフリカ森林支援が約束された。

森林保護や植林といった気候変動の対策で、世界銀行は5年間で225億ドル(約2兆円)、アフリカ開発銀行も5年間で250億ドル(約2兆円)を支援する。フランスのマクロン大統領も5億ユーロ(590億円)の追加支援を約束した。

様々な組織や政府が支援を表明しているのは、なぜだろうか。

直近18年間で失われた森林の地図
https://www.globalforestwatch.org/

森林減少の原因は

Phys.orgによれば、東南アジアと南米では大規模農業を推し進める農業ビジネスが熱帯雨林を破壊している。

一方、アフリカ中部および東アフリカでの森林減少は、小規模農業と燃料利用が原因とされる。前述したとおり、電気やガスの届かない村々では、煮炊きや暖房に木炭や木材が利用されるのだ。

それ以外にも、フランス24によるとコンゴ民主共和国やガボンでは、鉱山や石油採掘も影響しているという。そのため、この2国を含め厳しい環境保護方針をとる国々が出てきている。

武力紛争も森林減少の一因だというアフリカ・ニュースの報道もある。

森林などの自然環境と武力紛争との関係については国連も取り組んでいるが、天然資源の奪い合いを原因とした武力紛争が発生したり、紛争により無法地帯となった地域で違法な資源収奪が進んだり、資源は武装勢力の資金源にもなるため森林資源と武力紛争は密接に絡んでいる。

国際森林研究センター(CIFOR)によると、世界的に森林地帯での武力紛争は多く、上述のような資源絡みの他に、森林に住む多くの貧しい少数民族は政府から疎かに扱われる傾向があり、ゆえに政府ではないグループ(=武装勢力)を支持するといったことも関係しているという。

そして興味深いことに、紛争が落ち着いて平和になってからの方が森林減少が進むという調査結果もある。紛争で危険な森に入らなかった人々が森に入るようになり、開発が進み、失職することになった武装勢力の人間らが新たな職に就けずに森林で違法な伐採・採掘を進めるといったことが起きるのだ。

これからのアフリカの森

森林減少で何が困るかといえば、次のような流れで気候変動に影響するのだ。

  1. 人口増・近代化で、石油・石炭などの消費で発生する二酸化炭素が増加
  2. 森林が減少し、森林の二酸化炭素を減らす機能が弱まる
  3. 二酸化炭素が増えるが減らない状態になり、温暖化が発生
  4. 海面上昇や砂漠化が進む

Phys.orgによると、二酸化炭素といった温室効果ガス排出において、アフリカの排出量は現在たった4%である。それにも関わらず、半数以上のアフリカ人が干ばつや洪水といった気候変動で頻度の増えたサイクロンなどの自然災害の影響を受けている。

しかし2050年までに22億人と爆発的に増加するとされるアフリカで森林はますます減り、温室効果ガスの排出量は増加すると予測されている。

欧州や各援助機関が、アフリカの森林保護を支援する理由はそこにあるのだろう。アフリカにとどまらず、世界全体の問題である。

各国が進めているように、次のような活動がアフリカでの森林保護につながる。気候変動への対策にもなるだろう。

  • 国民を巻き込んでの植林と保護意識の向上
  • 環境保護政策の強化
  • 太陽光発電といった再生可能エネルギーの開発・普及

森林率の高い日本

ここ日本の森林はどうだろうか。
都市化が進み、森林も減っているに違いない。

ところが森林・林業学習館サイトによると、日本の森林率はなんと66%。
先進国の中でも、フィンランド、スウェーデンに次ぐ3位の森林率だ。
ちなみに世界の平均森林率は30%。

またこの40年間で日本の森林面積の増減はないという。
人工林が増え、天然林が減るという割合の変化はあるようだが、それでも減っているだろうという漠然としたイメージはよい意味で裏切られる。

※ 参考にした森林・林業学習館サイトによる「森林率」の定義は、「国土面積に占める森林面積」のこと。

※アフリカに関する森林率の定義は、各ニュースサイト上には記載が無かったが、同じ定義との前提で記載されているパーセンテージを引用した。

プロフィール:Risa Shimowada
東京タワーの麓でアフリカとメンタルヘルスと色々のごちゃ混ぜカフェBlue Baobab Africa ブルー バオバブ アフリカをやっています。アフリカや本、語学に興味があります。

参考にした情報

“African forest fires in the spotlight amid outcry over Amazon blazes”, France 24, Aug 27, 2019
https://www.france24.com/en/20190827-africa-forest-fires-spotlight-outcry-amazon-blazes-congo-basin-macron-g7

“Safaricom commits to plant 5 million trees in 5 years”, Capital Business, Aug 22, 2019
https://www.capitalfm.co.ke/business/2019/08/safaricom-commits-to-plant-5-million-trees-in-5-years/

“Ethiopia ‘breaks’ tree-planting record to tackle climate change”, BBC, Jul 29, 2019
https://www.bbc.com/news/world-africa-49151523

“Congo gets $65m funding to protect earth’s lung”, Africanews, Sep 4, 2019
https://www.africanews.com/2019/09/04/congo-gets-65m-funding-to-protect-earth-s-lung-congo-basin/

“Billions pledged to halt Africa’s forest loss”, Phys.org, Mar 14, 2019
https://phys.org/news/2019-03-billions-pledged-halt-africa-forest.html

”Why we need to protect biodiversity from harmful effects of war and armed conflict”, United Nations Environment Programme, Nov 06, 2018
https://www.unenvironment.org/news-and-stories/story/why-we-need-protect-biodiversity-harmful-effects-war-and-armed-conflict

”Forests and conflict”, CIFOR https://www.cifor.org/publications/Corporate/FactSheet/forests_conflict.htm

森林・林業学習館「日本の森林面積と森林率」( 2007年、2010年のデータ)
https://www.shinrin-ringyou.com/forest_japan/menseki_japan.php

森林・林業学習館「日本の森林面積と森林蓄積の推移」
https://www.shinrin-ringyou.com/forest_japan/menseki_tikuseki.php

農林水産省「森林破壊(しんりんはかい)が進むと、地球はどんな影響(えいきょう)を受けることになるのですか。」( 2005年)
http://www.maff.go.jp/j/heya/kodomo_sodan/0504/01.html

全国地球温暖化防止活動推進センター「家庭部門における二酸化炭素(CO2)排出の動向」
https://www.jccca.org/home_section/homesection01.html