「アフリカに旅行するなら、どこがおススメ?」
アフリカをテーマにしたカフェを経営してる仕事柄、よく聞かれる質問だ。しかし、私自身アフリカの全てを知っている訳ではないので「どこでもいいからまず行くべし」と適当な返事をしていた。
2019年9月、世界経済フォーラムが「旅行・観光競争力レポート 2019」を発表したので、おススメのアフリカの旅先をチェックしてみよう。
ECサイトを経営するJumiaが公表した「ホスピタリティ・アフリカレポート 2019」も、参考になる。
前後編の初回は、アフリカ旅行の参考になるデータを中心に紹介する。
伸びてる?アフリカ旅行
2017年時点のアフリカへの旅行者は世界の旅行者全体の5%に過ぎないが成長分野である。「旅行・観光競争力レポート 2019」による地域別成長率ではアジア・太平洋地域に次ぐ世界2位の成長率だ。
Jumiaのレポートによれば、2018年のアフリカGDPに占める旅行分野の割合は8.5%で、1940億ドル(約20兆円)。
海外からの旅行者は6700万人で2017年から7%伸びた。
国別では、旅行客が最も多いのは北アフリカのモロッコ1100万人、南アフリカの1000万人が次ぐ。
気になるビザは
ビザが必要か、取りやすいかというのも旅の重要ポイントだ。ビザ不要も含めたビザのオープン度合いを示すビザ・ランキングはこちら。
- モーリシャス
- ベナン
- ルワンダ
- ギニア・ビサウ
- トーゴ
モーリシャスは、世界経済フォーラムの「旅行・観光競争力レポート 2019」の総合ランキングでも1位になっている。総合ランキング3位のセーシェルは、ビザの面では9位。
エチオピアはビザ・ランキングで19位だが、ビザ緩和政策と、アジスアベバ空港がハブ空港として国際的な地位を高めていることから、旅行産業が大きく伸びているようだ。
世界的にもアフリカ諸国もビザは緩和の傾向にある。
アフリカ人の旅行は
次はアフリカ大陸内旅行で人気の都市トップ5。
アフリカ大陸に住むアフリカ人の旅行ということになるが、Jumiaによる予約数ランキング。
- ラゴス(ナイジェリア)
- アブジャ(ナイジェリア)
- ナイロビ(ケニア)
- モンバサ(ケニア)
- アクラ(ガーナ)
ナイジェリアはGDPでアフリカトップにも関わらず、「旅行・観光競争力レポート 2019」では安全性の得点が対象140国の中で下から2番目と低く、総合ランキング上位に入ってこない。
しかし、2億人の人口を抱える経済大国とあって人の移動は多いのだろう。ここでは1、2位をナイジェリアが占めた。観光とビジネス目的との内訳は不明だが、ビジネス目的の旅行も多そうだ。
目的地エリアの検索では、東アフリカが3割、西&北アフリカも3割(西と北が一括りにされている)、中部アフリカが4割。
旅行者性別は男性6割、女性4割。思ったよりも差は少ない。
一晩当たりの宿泊費用は50ドル(約5300円)。58ドルだった2018年と比べると、価格は手頃になっているようだ。
旅行者の年齢層は
- 25-34歳 :45%
- 35-44歳 :26%
- 45歳以上:20%
旅行者の年齢層は25歳〜34歳が45%と圧倒的に若い。これはアフリカの人口構成の若さを反映しているのだろう。
Jumiaによれば、今年発効したアフリカ大陸自由貿易圏(AfCFTA)もアフリカ大陸内の旅行を活性化させると期待されている。
高級ホテルも増えている
宿泊するホテルも旅行の大事な要素だが、世界的なホテルチェーンのホテル数ランキングはこちら。
チェーン名 | 施設数 | 客室数 | |
1 | アコー | 162 | 2万強 |
2 | マリオット | 135 | 2万強 |
3 | レジドール | 47 | 1万弱 |
4 | ヒルトン | 44 | 1.2万 |
5 | インターコンチネンタル | 28 | 7千弱 |
予想外に数が多い上に、どのホテルも建設中のホテルを2桁抱えている。
そして国ごとの2019年建設予定のホテル数ランキングはこちら。
- エジプト 1.5万室 ホテル数51
- ナイジェリア 8千室弱 ホテル数49
- モロッコ 6千室 ホテル数36
- エチオピア 6千室 ホテル数34
- ケニア 4千室 ホテル数27
ホテルもどんどん増えるようだ。北アフリカのエジプト、モロッコは観光が盛んな国。
出張でアフリカ
一般にMICEと言われる会議、学会、展示会といったビジネス利用を促す観光振興策があり、金額規模が大きいため世界的に開催・誘致合戦が盛んになっている。
東アフリカのケニア、ルワンダ、ウガンダや南アフリカもMICEにも力を入れはじめている。
ビジネス旅行はまだ全体の3割に過ぎないが、今後「学会でアフリカへ」「展示会でアフリカ出張」といったケースも珍しくなくなるかもしれない。
※MICE(マイス)とは:meetings(会議), incentives(招待旅行), conferences(学会), exhibitions(展示会)
JTB総合研究所『観光用語集』
人気の航空ルートは
飛行機乗客数ではアフリカは世界全体のたった2.1%、9200万人に過ぎないが増加はしており、今後も増加するとみられている。
こちらは航空路線の売上高ランキング。
- ヨハネスブルグ(南アフリカ)―ドバイ(UAE) エミレーツ航空
- ヨハネスブルグ(南アフリカ)―ロンドン(英国) 英国航空
- カイロ(エジプト)―ジッダ(サウジアラビア) サウジアラビア航空
- ルアンダ(アンゴラ)―リスボン(ポルトガル) アンゴラ航空
- ケープタウン(南アフリカ)―ヨハネスブルグ(同) 南アフリカ航空
経済大国の南アフリカは中東・ヨーロッパとの行き来が多いようだ。上位は中東・ヨーロッパの航空会社が占めており、アフリカの航空会社にも頑張ってもらいたいところ。
世界の旅行と「アフリカ」ブランド
世界全体の傾向としては、航空インフラやICTの向上、ビザ緩和などにより「旅行・観光競争力レポート 2019」でカバーする7割の国が前回調査の2年前より得点アップしており、旅行しやすい状況が世界的に整ってきている。
航空チケットなど旅行にかかる費用も下落傾向で、各国政府も旅行産業の重要性を認識して投資しており、競争も激しくなっている。
世界全体での総合「旅行ランキング」トップ5はこちら。
- スペイン
- フランス
- ドイツ
- 日本
- アメリカ
2018年の海外旅行客は世界で14億人を超えて伸び続けている。
世界人口が増え、旅行する余裕のある人たちも増え、今後も旅行者は増加するだろう。
一方で「観光公害(overtourism)」と言われる、観光客増加によるマイナス面も問題になりつつある。
人気の旅行先に集中する現状から、それぞれが興味のある場所へと旅行先が分散すれば、観光公害の緩和になるだろうし、人と違うことをしたいという現代人の欲求に応えることにもなる。
旅行先の分散によって、多様な国・民族・文化を抱えるアフリカの優位性が出て来るだろう。
Jumiaのレポートは、アフリカ旅行を盛り上げるには、海外メディアが作り上げるアフリカのネガティブイメージを払拭し、「アフリカ・ブランド」を確立することが重要だと提言している。
アフリカ旅行というとまず「安全は?」「衛生は?」「病気は?」という言葉が出て来るし、今回のレポートでも安全面や衛生面の評価はまだ高いとはいえない。
しかし地道な基礎インフラの整備改善を続け、「アフリカ・ブランド」を盛り上げていけば、「アフリカ旅行」が一般的になるのも遠い話ではないだろうと期待を込めて。
後編では、おすすめのアフリカ旅総合ランキングをお届けする。
プロフィール:Risa Shimowada
東京タワーの麓でアフリカとメンタルヘルスと色々のごちゃ混ぜカフェBlue Baobab Africa ブルー バオバブ アフリカをやっています。アフリカや本、語学に興味があります。
Photo by Rick Bergstrom, “Elephants of Kenya”, taken on October 13,2018
参考にした情報
“the Travel & Tourism Competitiveness Report”, World Economic Forum, Sep 4, 2019
http://www3.weforum.org/docs/WEF_TTCR_2019.pdf
“Hospitality Report Africa 2019”, Jumia, 2019
https://travel.jumia.com/en-gb/hospitality-report-africa-2019
“Five reasons why Africa will dominate the MICE industry in 2019”,Meeting Media Group: Association Magazine, 2018, Dec 10
http://www.meetingmediagroup.com/article/five-reasons-why-africa-will-dominate-the-mice-industry-in-2019
”MICE(マイス)とは・観光用語集”, JTB総合研究所
https://www.tourism.jp/tourism-database/glossary/mice/