Twitter(ツイッター)の創業者兼CEOであり、決済システムのSquare(スクエア)のCEOでもあるジャック・ドーシー(Jack Dorsey)が1か月に渡り初めてアフリカを訪問している。
ナイジェリア、ガーナ、南アフリカとエチオピアの4か国を訪問し、アフリカの起業家たちに会うのが目的だ。
ITメディアのMoguldom Nationによれば、「来年は旅行ではなく、半年ほどアフリカに住みたい。アフリカの起業家の課題を知り、それを解決する手助けをしたい」と述べている。
ナイジェリアとTwitter
アフリカのテックメディア「テックポイント・アフリカ」は、訪問1か国目のナイジェリアでのミーティングの様子を伝えている。ドーシーとTwitterの技術系幹部3人が出席した。
ナイジェリアのTwitterユーザー数を問う質問に対しドーシーは「足りない」と即答し、ユーザーを増やすのためにもナイジェリア人エンジニアを雇いリモート勤務してもらいたい、との希望を伝えた。
「ナイジェリアには多くの才能あるエンジニアがいるし、Twitterで議論が盛り上がるような出来事が沢山あるだろう」と同行のTwitterのCTOは語っている。
人口2億人のナイジェリアで、インターネットユーザーはその約半分の9800万人。Twitterの潜在顧客はたくさんいる。
しかしビジネス・インサイダー・サブサハラアフリカは、2019年2月のナイジェリア大統領選の際には、Twitterは選挙の公平性を確保したいとして複数のインフルエンサーアカウントを停止したと指摘している。
政府がネットを管理? 不穏なソーシャル・メディア法
ナイジェリアは2019年11月現在、ソーシャル・メディア法の制定を進めており、議論となっている。
ガーディアンによるとフェイクニュースを取り締まるもので、施行されれば政府にインターネットを遮断する権利を与えることになる。政府を貶めるような言説の流布には罰金か禁固刑が科されるという。
10月にはブハリ大統領自身がヘイトスピーチについて「断固とした態度をとる」と語っている。「言論の自由は尊重するが、それが他の市民や国の安全を損なう場合には断固とした態度を取る」とナイジェリア独立記念日のテレビ放送で述べた。
政府は「自国の平和と調和」を守るために必要な規制だと説明するが、ジャーナリストや人権団体からは言論の自由を否定するものだとして反発が起きている。
アフリカにはインターネット規制を行ってきた国が多数ある。コンゴ民主共和国やマリ、カメルーン、チャド、タンザニア、ウガンダなどだ。特に長期独裁政権ではネット規制が厳しい傾向にある。
ブハリ政権は現在2期目であるが独裁的な規制に向かうのだろうか。
ユーザーを増やしたいTwitterにとっても、アフリカ諸国の強権的な規制は懸念事項のはずだ。
これまでも言われてきているように、アフリカに進出する企業にとっての大きなリスク要因にもなっている。
ガーナではビットコイン・ミートアップ
ジャック・ドーシーの2か国目の訪問地はガーナ。
仮想通貨メディアのDecryptによればドーシーは以前から仮想通貨開発に投資しており、2019年10月には仮想通貨ベンチャーのコインリスト(CoinList)に出資、ライトニング・ラボの支援もしている。
自身の会社Squareのアプリでもビットコイン取引が可能だ。
ガーナでは到着したその日に仮想通貨取引所BitSikaのCEOと会い、Twitterに写真を投稿している。
ガーナの仮想通貨取引所 ビット・シカ
ガーナの仮想通貨取引所ビット・シカ(Bit Sika)は、米国の大学を中退してガーナに戻ったアツ・ダヴォー(Atsu Davoh)が2018年に立ち上げた。
起業家支援のパイオニア・サイトで25歳のAtsuは「友だちはテック企業で働ているけど、自分はインパクトのあることをやりたかった。スマートなアフリカ人はアフリカにいながらアフリカの課題を解決すべきなんだ」と語っている
BitSikaのTwitterプロフィールには「ガーナ・ナイジェリア間で即時に現金/仮想通貨を送金できる」とある。
入出金はモバイルマネー、銀行送金、クレジットカード、ビットコインが利用可能で、米ドルと固定レートのステーブルコインであるUSDCoinを利用している。
日本の取引所のような投資目的ではなく、個人間送金の機能がメインのようだ。
アフリカの仮想通貨事情
仮想通貨メディアのDecryptによると今回訪問の4か国中、ナイジェリア、南アフリカ、ガーナの3か国では「Bitcoin」(ビットコイン)というキーワードの検索回数が多い。
この1年のGoogle Trendでの「Bitcoin」検索国トップ5はナイジェリア、南アフリカ、オーストリア、スイス、ガーナだ。
最大手の仮想通貨取引所バイナンスでは10月、ナイジェリアの通貨ナイラのサポートが始まった。
テック系メディアのネクスト・ウェブによると、2019年7月にジンバブエで外貨使用が禁止された際は同地でのビットコイン取引が急増した。
多くのアフリカ人は銀行口座を持たないが携帯電話は普及しており、地方にもモバイルマネーが入ってきている。
仮想通貨が広がる下地は出来ている。
アフリカでドーシーは誰に会い、何を語るのだろうか。いまとこれからを知るうえでも注目だ。
プロフィール:Risa Shimowada
東京タワーの麓でアフリカとメンタルヘルスと色々のごちゃ混ぜカフェBlue Baobab Africa ブルー バオバブ アフリカをやっています。アフリカや本、語学に興味があります。
参考にした情報
Twitter, Jack Dorsey
https://twitter.com/jack
“Twitter CEO Jack Dorsey Plans To Live In Africa For 3-To-6 Months In 2020”, The Moguldom Nation, 2019, Nov 22
“Highlights from the town hall meeting with Jack Dorsey and the Twitter team at Techpoint Africa”, techpoint.africa, 2019, Nov 10
https://techpoint.africa/2019/11/10/techpoint-townhall-with-jack-dorsey/
“Twitter CEO Jack Dorsey in Nigeria: Here are the 5 things we’d like him to address while he is here”, Business Insider SSA, 2019, Nov 11
“Social media bill to empower government to shut down internet”, The Guardian, 2019, Nov 22
“Jack Dorsey eyes Africa’s Bitcoin market”, Decrypt, 2019, Nov 13
https://decrypt.co/11417/jack-dorsey-eyes-africas-bitcoin-market
Google Trends, Bitcoin検索
https://trends.google.co.jp/trends/explore?q=Bitcoin
”Atsu Davoh”, Pioneer,
https://pioneer.app/winners/atsu-davoh
BitSika
“Twitter CEO Jack Dorsey attends Bitcoin meetup in Ghana”, the next web, 2019, Nov 12
https://thenextweb.com/hardfork/2019/11/12/twitter-ceo-jack-dorsey-attends-bitcoin-meetup-in-ghana/